ゲストハウス付きの家は日本でも建てられる?離れをつくるときのルール

海外の豪邸の物件動画を見ていると、母屋とは別に、庭の奥に小さな家がもう1棟建っていることがよくあります。
来客が泊まるためのゲストハウスです。

「うちの敷地にも、あんな離れが建てられたら」と考えたことのある方もいると思います。
住宅ライターの三輪恭平です。
ハウスメーカーで注文住宅の設計を12年担当し、いまは間取りや住宅設備の記事を書いています。

設計をしていたころも、「庭に来客用の離れを建てたい」という相談はときどきありました。
結論から書くと、日本でも離れは建てられます。
ただし、水回りをどこまで付けるかによって、建築基準法のうえでは「離れ」ではなく「もう1軒の家」として扱われることがあります。

この記事では、ゲストハウスのような離れを日本でつくるときに押さえておきたいルールを、設計者の目線で整理します。

アメリカの豪邸にある「ゲストハウス」はどんな建物か

まずは、憧れのもとになっているアメリカのゲストハウスから見ていきます。

Business Insider Japanが2022年に紹介したビバリーヒルズの「ロマ・ビスタ・エステート」は、本邸の横に離れのゲストハウスがある豪邸です。
ゲストハウスにはベッドが3台、バスルームが2つあり、専用のキッチンやダイニング、リビングまでそろっていると報じられています。
来客用の部屋というより、小さな一軒家がもう1棟建っている感覚です。

このロマ・ビスタ・エステートや、ゲストハウスと従業員用の部屋を備えたベル・エアの「カーサ・エンカンターダ」の写真は、長田雄次さんがアメリカの豪邸をまとめたブログで見ることができます。
長田さんは、新しい家を建てるときに海外の家を参考にして間取りや設備を考えることがあると書いています。
日本の家づくりに置き換えて眺める読み方は、設計をしていた私から見ても参考になります。

アメリカでは、こうした敷地内の別棟が制度としても後押しされています。
カリフォルニア州住宅・地域開発局(HCD)の2026年版ハンドブックによれば、母屋と同じ敷地に建てる独立した住戸「ADU」の許可件数は、2016年の1,336件から2024年には30,354件に増えました。
約20倍です。

同じハンドブックでは、ADUを「1人以上が暮らせる、完全に独立した生活設備を備えた住戸」と定義しています。
居間・寝室・食事・調理・衛生のための設備を恒久的に備えることが条件です。
つまりアメリカでは、キッチンとバスルームのそろった離れこそが制度の想定する形です。

日本では事情がかなり違います。
同じことをしようとすると、最初にぶつかるのが次のルールです。

日本は「1つの敷地に建物は1つ」が原則

日本の建築基準法では、ひとつの敷地に建てられる建物は1棟が原則です。
設計の現場では「一敷地一建物」と呼んでいます。

例外になる「用途上不可分」

根拠になっているのは、建築基準法施行令の第1条第1号にある「敷地」の定義です。
条文では、敷地を「一の建築物又は用途上不可分の関係にある二以上の建築物のある一団の土地」としています。

用途上不可分とは、「その建物だけでは役目を果たせず、母屋とセットで使う関係」のことです。
物置や車庫、勉強部屋や隠居部屋としての離れがこれにあたります。
母屋とセットの離れなら、同じ敷地に2棟目を建てられるわけです。

面白いのは、愛知県や札幌市の資料で、旅館やホテルにも「離れ(客室)」が不可分の建物として挙がっていることです。
宿の離れも、本館とセットで使う建物として扱われているわけです。
住宅の離れも同じで、母屋と組み合わせて使う建物であることが求められます。

敷地を分けるなら接道と建ぺい率に注意

離れが独立した住宅と判断されると、敷地を2つに分けて、それぞれに家が1棟ずつ建っている形に整える必要があります。

このとき、分けたどちらの敷地も、建築基準法第43条にある「道路に2m以上接する」という条件を満たさなければなりません。
奥に長い敷地や角地でない敷地では、ここで計画が止まることがよくあります。

もうひとつが面積の上限です。
建ぺい率は、同じ敷地に建物が2棟以上あれば建築面積の合計で判断すると、第53条に書かれています。
母屋が上限近くまで建っていると、離れに回せる面積がほとんど残っていないこともあります。
容積率も同じように、母屋と離れを合わせた面積で枠に収める必要があります。

水回りをどこまで付けるかで扱いが変わる

離れが母屋とセットの建物か、独立した住宅かは、主に台所・トイレ・浴室の有無で判断されます。
ここが、アメリカのゲストハウスをそのまま日本に持ち込めない一番の理由です。

自治体によって線引きが違う

判断の基準は全国共通ではありません。
建築確認を担当する自治体(特定行政庁)ごとに、取り扱いを決めています。
公開されている資料から3つを比べてみました。

自治体独立した住宅として扱われる条件
愛知県台所・便所・浴室のすべてがある
札幌市台所及び便所等がある
埼玉県所沢市台所と便所がそろっている(浴室がなくても該当)

愛知県なら、浴室を付けなければ離れとして扱われます。
所沢市では、台所とトイレがそろった時点で一戸建ての住宅になります。
同じプランでも、建てる場所によって結論が変わるということです。

所沢市の取り扱いはかなり具体的

所沢市が公開している「住宅に附属する「離れ」の取扱い、注意点について」は、設計者が気にする点まで書かれていて参考になります。
内容をまとめると次のとおりです。

  • 台所と便所がそろえば一戸建ての住宅として扱う
  • 床面積の上限はないが、母屋の半分程度かつ30㎡以内を目安にしている
  • 2階建てや居室が2つ以上ある計画は、調査の対象にすることがある
  • ミニキッチンでも、ガスやIHの調理設備があれば台所があると判断する

30㎡は、縁側と押入れの付いた8畳の和室に、玄関と廊下を足したくらいの広さだそうです。
寝室とリビングとキッチンを備えたアメリカ型のゲストハウスは、この目安から見ると明らかに大きすぎます。

所沢市は、規模の大きな離れを調べる理由として「それぞれの建築敷地の接道を逃れる行為」を挙げています。
離れという名目で実質的に2軒目の家を建て、敷地を分けたときに必要になる道路との接し方の条件を避けるケースがあるということです。
規模や間取りにまで目安があるのは、そのためだと読めます。

来客用の離れで考えやすいプラン

打ち合わせで「ホテルの客室みたいな離れにしたい」と言われたとき、私がまず確認していたのは、来客が離れで何をして過ごすかでした。
眠るだけなのか、食事も離れで完結させたいのかで、必要な設備がまったく変わるからです。

設計者の目線で、来客用の離れを母屋とセットの建物に収める考え方を挙げておきます。

  • トイレと洗面だけを付けて、お風呂と食事は母屋でとってもらう
  • キッチンは付けず、お茶を淹れる程度は電気ポットなどで済ませる
  • 1階建て・1部屋にして、寝室として使える広さに絞る
  • 母屋との行き来に屋根を付け、雨の日でも通いやすくする

ミニキッチンを付けるかどうかは、自治体によって判断が分かれやすいところです。
図面がある程度固まった段階で、自治体の建築指導課に相談するのが確実です。

確認申請・登記・税金のルール

離れは小さな建物でも、手続きは母屋と同じように考えておく必要があります。

10㎡以内でも申請がいる場合がある

「10㎡以下なら建築確認はいらない」という話を聞いたことがあるかもしれません。
これは建築基準法第6条第2項のルールで、防火地域と準防火地域の外で、増築する部分の床面積が10㎡以内の場合に限られます。

防火地域や準防火地域なら、面積が小さくても確認申請が必要です。
また、10㎡は畳6枚分ほどの広さです。
ベッドを置いて人が泊まれる離れなら、まず超えると考えてください。

2025年4月の法改正で審査が厳しくなった

2025年4月には建築基準法の改正が施行され、木造住宅の確認申請の扱いが変わりました。
国土交通省の解説ページによると、都市計画区域などの中では、平屋かつ延べ面積200㎡以下の建物以外は、構造によらず構造の審査が必要になりました。

以前は小さな木造住宅の審査を簡略化できる場面が多くありましたが、今は2階建てにすると提出する図書が増えます。
離れを2階建てにしたいときは、手続きの重さが変わる可能性があるので、設計の初めの段階で確認しておくと安心です。

登記と固定資産税

離れを建てたら登記も必要です。
母屋の「附属建物」として登記する場合は、母屋の登記の内容が変わるので、不動産登記法第51条により1か月以内に変更の登記を申請しなければなりません。
申請を怠ると10万円以下の過料の対象になります。
手続きは土地家屋調査士に頼むのが一般的です。

固定資産税もかかります。
北九州市の固定資産税の案内では、屋根と壁で風雨をしのげること、土地に定着していること、目的の使い方ができる状態であることの3つがそろうと、家屋として課税の対象になると説明しています。
基礎の上に建てた離れであれば、課税されると考えておきましょう。

来客から宿泊料をもらうなら別の法律がかかる

日本で「ゲストハウス」と言うと、旅行者が泊まる安い宿を思い浮かべる方も多いと思います。
離れをそうした宿として使うなら、建築基準法とは別の法律が関わってきます。

親戚や友人を無料で泊めるだけなら、宿の許可はいりません。
厚生労働省の旅館業法Q&Aでも、宿泊料を受け取らなければ旅館業法の適用は受けず、知人・友人を泊める場合は一般的に許可は不要と説明しています。

一方で、宿泊料を受け取って泊めるなら、旅館業法の許可を取るか、住宅宿泊事業法による民泊の届出が必要です。
民泊の場合、人を泊められるのは年間180日までです。

観光庁の民泊制度ポータルサイトによれば、届け出る住宅には台所・浴室・便所・洗面設備の4つが必要です。
ただし、同じ敷地内の複数の建物を一体で使えるなら、母屋と離れをまとめて1つの住宅として届け出ることもできます。
水回りを絞った離れでも、母屋と合わせれば条件を満たせる可能性があるということです。
実際に始めるときは、保健所や自治体の窓口で確認してください。

建てる前に確かめておきたいこと

最後に、離れの計画を始める前に確認しておきたい項目をまとめます。

  • 敷地が防火地域・準防火地域に入っているか
  • 母屋を建てたあとに、建ぺい率と容積率の残りがどのくらいあるか
  • 自治体が離れの水回りをどう扱っているか
  • 敷地を分ける場合に、それぞれ2m以上道路に接するか
  • 来客を無料で泊めるのか、宿泊料をもらうのか

費用の目安も気になるところです。
SUUMOの記事(一級建築士監修)では、水回りのない木造の離れで、6畳ほどなら約240万〜300万円、10畳ほどなら約400万〜450万円としています。
既製品を現場で組み立てるプレハブなら、6畳ほどで約150万〜200万円と少し下がります。

トイレや洗面を付ければ、ここに設備と配管の費用が加わります。
いずれも目安なので、実際には見積もりで確認してください。

まとめ

ゲストハウスのような離れは、日本でも建てられます。
ただし日本には一敷地一建物の原則があり、母屋とセットで使う建物であることが条件になります。

台所やトイレ、浴室をどこまで付けると独立した住宅とみなされるかは、自治体によって違います。
アメリカの豪邸のように一式そろった離れを目指すと、敷地を分けて接道を確保するところから考えることになります。

来客が泊まる部屋として割り切り、水回りを母屋と分担すれば、日本の敷地でも実現できる離れは十分にあります。
海外の豪邸の写真を眺めて気に入ったところを見つけたら、まずはお住まいの自治体の取り扱いを調べるところから始めてみてください。